≪連載・・・『リーダーの信頼される力』@≫
〜☆Vo.7『実力VS信頼』?☆〜
〜現場の話題、落とし穴、失敗などに注目して考えるコラム〜
あの人は優秀だけど、何でも自分中心だからあまり頼みたくない。
確かに仕事はできるが、調子が良すぎて人間的に好きでない。
どんな人もこのような感情を抱いたり、抱かれたりしたことは1度や2度ではないかもしれません。
特に、企業の人事部からのお話では、まわりからの負の偏見も多いMBAホルダーに対してなおさらこのような感情を持つことが多いようです。
では、冒頭の感情が現れる最も重大な原因は何でしょうか?
敬遠される理由 | 1.仕事はできないのに、独断型で、主張が強すぎるから 2.仕事はできるが、独断型で、主張も強すぎるから 3.仕事ができ、人当たりも良いが、自分の実力向上しか興味がないから
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どれだと思いますか?
最も大きな原因は3番です。つまり、相手の立場(チームや会社、顧客企業のため)を考えてというよりも、あくまで自分の実力、実績向上のための行動が過ぎるということなんです。意外ですよね。
中には、「自分の実力、実績向上」のための行動の延長上に最終的な「会社や顧客のメリット」になれば良いのでは」という方もいらっしゃいます。
当然そうなのですが・・・・もちろん「チーム、会社、顧客のメリット」の最大公約数を達成するために自分が何をすべきか(何ができるか)を考えるのが理想ですが、現実的には冒頭のように批判的な意見を持つ人から見ると、「自分の実力・実績向上」のための行動が、「チーム、会社、顧客のメリット」を考えた行動よりも優先していると感じられているようです。
一方、このような批判を受ける当の本人達には、「確信犯的な人」と「確信犯的ではない人」の2種類存在するようです。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
【1.確信犯的な人』の言い分】
『何て甘ちゃんなことを言っているんだ。そりゃ弱肉強食の時代は自分のメリットを考えないとやっていけないぜ』
実はこのように確信犯的な人はまだ問題の根は浅いといえるのです。
つまり「ぶっちゃけ、確信犯的にやっているのをみんな気づいていますよ」ということを認識させれば良いのですから。
つまり、問題は自分で誤った優先順位付けをした行動をしている、ということを十分認識した上で、「この程度は良いだろう」、「この人に対しては多少いいだろう」「まあ、だれも気づかないだろう」と自分本位に偏った行動をしているからではないでしょうか。
しかし、フタをあけてみるとどっこい、周りはあなた以上に賢い(周りは知らないフリをするか、知った上で接している)というオチがついていたのですね。
このような人には、短期的に親しくしていても、中長期的にはこのような人間に対して深い付き合いのできる人はついてこないのですよね。
これは競争力の強い企業がマーケティング政策を練るときに陥ってしまう誤った感覚と似ているのかもしれません。
「この品薄の人気商品を売るために、この売れない商品をバンドルしよう(昔のガンダムのプラモデルで、人気のないホワイトベースのプラモデルをセットに売ろうなど)」と考えても、消費者は狙い通り買いませんし、買ったとしても、その店に対する不信感は拭えず、その後その店以外で探すようになるのと同じかもしれません。
病院もその一例です。一回かかった病院でひどい扱われ方をしても、治療の途中で病院を変えるのはリスクだと考えるので、ある意味病院側は治療というサービスで、高いスイッチングコストを患者に課すことができますよね。
ただし、患者は健気に通院していても(ロイヤルティは高くても)、それはプラスではなく、マイナスのエネルギーによるロイヤルティです。そしてこのロイヤルティは結果としてあるきっかけで簡単に崩れてしまうんですよね。
病院の例では、一連の治療が終わったと同時に二度とその病院には行かなくなる、というように・・・。
このように、1番に当てはまる人は「皆、あなたの偏った(割り切った)行動については認識した上で接しているんですよ」ということを再認識して頂くほかに解決案はありません(しかしコレはショックは大きいかもしれません)。
自分以上に周りは敏感で、良く知っていることだけでも十分認識する必要がありますが、さらに恐ろしいことに「このような認識を実は大抵その他の人と共有しているのです」と言われたらあなただったらどう思いますか?
これは、特に労働市場でも顕著に見られる典型的な例です。
いくら転職時にピカピカの履歴書と職務記述書を出して、面接でも調子よく飛ばしていても、必ずあるレベル以上のヘッドハンターや採用企業は必ず転職希望者のリファレンス(個人の信用照会)を取ります。
そして、そのリファレンスでは「笑ってしまうほど」候補者の自己PRと実際の評判との間で開きがある(言うまでもなく例外を除き後者が正しい・・・)というケースにぶち当たります。
よく「徳を積んだ人は素晴らしい人から慕われる」=人徳があるといわれますが、人の評価こそ「結果」ではなく「プロセス」を見ればすぐにわかるものです。
当然結果が重要ということは紛れもない事実ですが、だからといってプロセスが重要ではないということはありません。
人間は感情の生き物ですから、最終的な信用や信頼というものは、その人なりの「色」や「信念」とそれに基づく「行動」についてくるものかもしれません。
では、2番目の確信犯ではない人の誤りを見てみましょう。
【2.『確信犯ではない人』の言い分】
『な、な、なんていうことを言われるのですか。私は常にチームと会社、そしてお客様のメリットだけを考えて行動してきたのに・・・ぐすん。』
問題はむしろ確信犯ではなく、このように総論では認識しているが、各論では認識できていないような人の場合のようです。
このような人は「相手のメリットを考えて行動している」というレベル自体にズレがあるので、している・していないの話よりもむしろ「どのレベルでしているの?」ということをすり合わせないといけないのですよね。
そのためには、まず「具体的に事例を出して」、「どのレベルで」行動しないと意味がないのか、という問題を認識するように「気づかせる」必要があります。
本来であれば、確信犯と違いココロの底からチーム、会社、顧客へ「貢献したい」と感じているということですから、具体的に「こんな場合なんかも、もう少しこのような観点で行動できると◎です」ということを示せば良いのですが、実際は、具体例(ベンチマークとなる人の行動)を示して認識してもらわないと正しく理解してもらうことが困難なケースも多いのです。
たとえば、日頃様々な人と接する中、結果的に信頼を失ってしまっていると言わざるを得ないのが、ある人(または会社)の事業やサービスなどを「第三者かに紹介」するときの場面といわれます。
「この会社を紹介しますよ」
・・・いろんなところで見られますよね。
これは、頼まれて初めて「わかりました、紹介しましょう」というケースと、頼まれずによかれと思って「あなたの会社にとってメリットがあると思うので紹介しますよ」というケースの2種類あります。
ただし、両方とも信頼を失う最悪の結果を残すことが多いといいますから、ちょっとそれぞれのケースを見てみましょう。
1.頼まれて紹介するケース
紹介を頼む側にとっては、「出資を依頼したい」、「提携をしたい」、「商品をPRしたい」など様々ですが、最悪の場面というのは次のとおりです。
頼まれたあなたは、とりあえず紹介先に連絡をとり、「紹介してほしい、という企業があるんだけど、とりあえずちょっと会ってくれませんか」とアポ取りを行います。
紹介依頼先にも「来週の月曜に時間が取れましたので、行ってみて下さい」と答えとりあえず紹介者のやっつけ仕事終了。
(当日のMTG)
紹介先「・・・・全然趣旨を理解していないのですが、何でしょうか」 紹介依頼側「え?・・あ、あのー・・・・実は・・・」 紹介先「・・・あー、そうですか・・・。わかりました。また機会がありましたらご連絡します・・・」 紹介依頼側「か、かしこまりました。ありがとうございました」
-機械的な会話劇場の終了-
こんな紹介のされ方は、紹介依頼側にとっては最悪のされ方ですし、趣旨を理解しないで紹介をされた方も大抵のケースは時間の無駄で終わってしまうんですよね。
多くの場合、依頼した側は「少しでも多くの接点を持つためなので仕方がない」という気持ちで仲介者に苦言を呈したりしないでしょうが、相手に与えた印象は最悪でしょう。折角の商談先とのお話の結果が中途半端な形で終了してしまうのは非常にもったいない話です。
自分でアプローチした方がよっぽどましな場合も多いでしょう。
また、紹介先にとっても迷惑な話です。紹介者が時間をとってくれと言われたのでとったが、「単なる営業だった」という思いがつのります。多くの場合、紹介者は「あまり中身はわかりませんが、とりあえず会ってくれませんか」ということが多いようです。
では次に、頼まれずに紹介をしてあげるケースを見てみましょう。
2.頼まれずに紹介するケース
よかれと思って紹介したはずが、先ほどの例と同様、紹介された側とした側が無言/または一方的な営業トークで話しがかみ合わないまま終了、というケースが多いようです。
原因は1番のケースと一緒です。
あなたが、きちんと段取りをせずに、「話はつけた。あとはお好きに」というのは、最悪の場面を作ってしまうだけであり、紹介をしてもらった側も紹介のされ方が曖昧だと「潜在的な顧客を一瞬にして失ってしまう」ことも多いのです。
ここで、簡単に「会社を紹介」といいますが、今一度その行為の重要性を考えてみる必要があるかもしれません。
基本的に、人を紹介するということは、「紹介者の信用」を売る、ということであり、たとえそれがよかれと思って紹介をする場合であっても、そのときには「紹介者の責任」というものが発生することを認識する必要があるのです。
「紹介してやってるんだから・・・」と思う人は要注意。
一方のニーズしか満たせないような紹介や、良く知らない人や会社でもとりあえず紹介する、というような行動は、頼まれて紹介する場合も、頼まれずに紹介する場合でも、紹介先双方の背景を無視して、両社の折角の事業機会を無くしてしまったり、一方的に無駄な時間と労力を押し付けてしまう無責任な行為といえるんですよね。
●『リーダーがリーダーたる所以・・・信頼の大きさ』
周りの人がついてくるリーダーには、実力よりもむしろ信頼が必要といわれます。
つまり、仕事ができる人はたくさん存在するが、仕事ができ人を統率するためには実力に輪をかけて大きな信頼を築いているといいます。
中途半端な紹介や、自分が信頼できない先の紹介などは決して行わず(お互いにとって失うものの大きさやリスクの方が大きい)、逆にお互いにとって良いと思われ、自分も推薦できる先の紹介は徹底的に自分も参加し、お互いの紹介(ニーズ、長所や機会など)をきちんとした上で、紹介の場を設定するように努めているといいます。
また、MTG時にはありがちなお互いの紹介だけで30分終了・・・というのではなく目的に沿った話の中身について深いコミュニケーションがとれるようにセッティングをする、ということも最低限の紹介者責任のようです。
また、本当に自分の信頼や責任をかけて紹介できるような人や会社の場合は、紹介された方がMTGに伺ったら「既に話がついていて受注の内容の確認だった」というケースもあるようです。
そこまで・・・と思われる方は、今一度振り返ってみると良いかもしれません。
優れたリーダーと普通のリーダーでは、結果として中長期的な付き合いの
◎深さ(浅い人脈か深い人脈か)と
◎広さ(部下だけでなく、同僚、上司、取引先、取引先の取引先・・・)
を比べてみると、誰が何といおうと圧倒的な違いが見られるのですから。
改めて、紹介とは「機械的に行うもの」ではなく「自分の信頼」をかけて 「真剣に行うもの」であることを忘れたくないですね。
次号につづく☆Vol.8 『義理 vs. 論理的行動』☆ ≪連載“信頼される力とはA”≫
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〜現場の話題、落とし穴、失敗などに注目して考えるコラム目次〜 通勤大学MBAシリーズその他の執筆を行うグローバルタスクフォースの編集部によるコラムです。体系的な知識や理論の整理を目的とするGTFの書籍群に対し、より実務的で現場よりのトピックを提供します。 ※本コラムはメンバー向けのメールマガジンの中のコーナーを加筆修正したものです
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