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LEADERS INTERVIEW
for Career Management

「誰にでも好かれる人」
になろう!


トレンダーズ株式会社 
代表取締役 経沢 香保子氏


1997年3月慶応義塾大学経済学部卒業、同年4月リクルート入社、人材総合サービス部門で活躍。98年エイ・ワイ・エーネットワーク入社、教育事業の立ち上げ・人材採用などを手掛ける。99年楽天入社、営業部・社長室を経て、新規事業「楽天大学」の立ち上げに参画。2000年4月トレンダーズ設立、代表取締役就任。F-1層(20-34歳の女性)を活用するマーケティング事業やプレスリリース代行サービス「広報担当」、女性幹部専門の人材紹介サービス「ones.be」などを立ち上げている。


深堀りして得意技を磨け

  私はこれまで二度転職して、26歳で会社を立ち上げました。いま思えば「面白そうに見えるとすぐに飛びついてしまったりせず、もう少し我慢すればよかった」と思うこともあります。でも当時は焦っていたのでとにかく経験を積んで成長したかったんです。そんな衝動的に行動する自分が止められませんでした。経営者を目指す場合、20代でテーマを定める必要はないと思います。トップになる人とは「どんな課題もクリアできる人」ではないでしょうか。私は仕事を選びませんでした。どんな仕事でも努力や工夫を積み重ねることで、仕事が面白くなるし自分を成長させられると思います。深く堀っていけばすべての仕事の本質が、「相手に喜んでいただく」ことに行き着くのです。

  努力していい結果を残せば、それが“売れる技”になり、その後の起業や新規事業の立ち上げなどに役立ちます。例えば私の“技”の1つに「教育」があります。楽天では出店者教育を行なう「楽天大学」を立ち上げました。これは2社目に働いた98年エイ・ワイ・エーネットワークで取得した「モバイルアドバイザー」という資格と教育制度を創設した経験を生かしたのです。こういう得意技を短期間で身に付けるには相手の期待値が100%だとすれば、それを超える実績を積み重ね大きな仕事を任せてもらえるようになることです。達成率が99%だったら資産でいえば元本割れじゃないですか。ところが110%ならば、7回掛ければ元本の約2倍になるんです。

  最近よく「今の仕事は将来起業するのに役立ちそうもない。どうすればいいんでしょうか」といった相談を受けます。でも、その仕事に対してベストを尽くしたのかどうかは疑問です。“そこそこの技”ではどこにも通用しないんです。どんな職種の人でも「独立してその仕事を会社からアウトソーシングできるレベルかどうか」考えてみるといいですよ。

経営者3年目の転機

  いつの間にか私のキャリアは、会社員より経営者の方が長くなりました。創業当初はガムシャラに仕事をしても報酬は満足に取れず、空気を吸うのもやっとの状況。3年目に業績が安定、十分なリターンが得られるようになりました。その翌年、私は毎月のように海外旅行に出かけるようになりました。「社長は息抜きも必要」と思ったのです。それが私の甘えだったのでしょう。トップが停滞していれば、社員はそれを敏感に感じ取ります。いつの間にか社員のモチベーションが低下していました。

  私は反省しました。これまで1年ごとに転職するなど、常に変化し続けてきました。その結果多くのことを得てきました。ところが、起業して3年で経営に安定を求めました。私が上を目指して変化しないのに、社員のモチベーションが上がるはずがありません。世の中は変化しているのに、自分だけ変化しなくていいわけないですよ。ダーウィンの進化論ではありませんが、「強い人というのは変化し続ける人」だと思います。

  私の考え方が間違っていたんです。確かにこの会社は私が出資して設立した会社ですが、会社は公器であって私物ではないのです。私は法人“トレンダーズちゃん”の「保護者」であって「所有者」ではない―――。そこに気付いたので組織を拡大させる核となるマネジャークラスの人材を採用しました。合わせてオフィスに投資、新オフィスに移転したのです。

共感を得られるようになろう

  トップを目指す人に私がアドバイスできるのは、「誰にでも好かれるようになろう」ということです。自分の考え方や目標に共感してくれる人を集めるのです。そうやって一肌脱いでくれたり、応援してくれたりする人を増やすのです。新規事業の立ち上げを成功させるコツと同じです。先日、ある新規事業への協力を呼びかけたら、60人の方が平日の夜を使って協力してくれることになりました。みんな人件費の高い人たちなんです。これってすごいことじゃないですか!

  正論を言う人より、愛嬌があったり、好感を持たれたりする人の方が周囲の協力も集められると思います。そんなヒューマニティーやチャーミングさが、今の時代に求められる能力ではないでしょうか。


「仕事も人生も面白くありたい」

  経沢さんはこれまでの実績について、「私はホームランバッターじゃないんです。ヒットで出塁して、バントでせこく2塁に進め、確実に得点するタイプ」と笑う。しかし、これほど多くの新規事業を立ち上げ、成功させ続けた「出塁率」は“イチロー級”ではないだろうか。そんな彼女の原点は「仕事も人生も面白くありたい」という純粋な思いである。彼女に「サラリーマンとして出世したくなかった?」と問うと、「私にとって出世とはいい仕事をすること、褒められること、喜ばれること」と答えてくれた。経沢さんは人を驚かせよう、喜ばせようと必死で考え抜くこと自体を面白がるからこそ、他人が考えもしないようなユニークなサービスや斬新なアイデアを思い付くのだろう。(取材・文/角田 正隆)

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