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LEADERS INTERVIEW
for Career Management

「日経BizCEO」オープン記念講演
「ポジティブシンキングで転職もビジネスもうまくいく」

株式会社ライブドア
広報宣伝グループ
アシスタントマネージャー
乙部 綾子氏

1976年生まれ。96年3月短大英文学科卒業。同年日系航空会社に客室乗務員として入社。その後外資系航空会社に転職。高級レストランのレセプショニスト、秘書を経て、2002年10月ライブドア入社、広報宣伝グループ配属。03年1月よりアシスタントマネージャー昇進。ブログ『ライブドア広報・乙部綾子のお仕事日記』更新中。近著に『私のポジティブ仕事術40のヒント』(双葉社)がある。

2重のプレッシャー

 小学生時代に『スチュワーデス物語』を見ていました。それ以来客室乗務員に憧れていました。短大卒業後、日系航空会社の客室乗務員として採用され、国内線で「パーサー(客室乗務員の長)」の資格を目指して努力していました。しばらくすると、国際線に異動しないかという誘いがありました。チャレンジ好きな私は、国際線を飛ぶことにしました。国際線の乗務員はキャリア十年以上のベテランばかり。ベテランと同レベルのサービスを提供しなければならないというプレッシャーが、私に重くのしかかりました。しかも異動と同時期に、パーサー昇格のトレーニングも始まりました。その二重の負担に耐えかね、会社を辞めようと思ったのです。

 そのとき私の頭に浮かんだのが「敗北感の残る転職だけはしたくない」という思いでした。あれだけあこがれて就いた仕事なのに、こんなネガティブな気持ちで辞めてしまったら、一生後悔する。さらに自分自身を嫌いになってしまうのではないか――。冷静になって考えてみると、そのときの私はどこかで人のせいにしてしまう部分がありました。先輩に気を遣ってしまい、言うべきことも言わず、不必要な遠慮をしていたのです。それが分かった瞬間、すべての迷いが断ち切れました。「最初の目標を達成しよう」と思い直すと、自然とお客様に上質なサービスを提供できるようになりました。研修も楽しめるようになり、ついにパーサーへの昇格を果たしたのです。

アポなしで大使館に飛び込む力

 当時、私が担当していたフライトは長くても6時間でした。お客様と接する時間が短く感じた私は、さらに長時間のフライトにチャレンジしたくなって外資系航空会社への転職を意識し始めました。そしてある外資系航空会社に応募します。客室乗務員は人気の仕事ですから、狭き門でした。応募者のなかには面接試験対策のために専門スクールに通う人も多いのです。スクールでは「受験する会社を褒める」よう指導されますが、それでは差別化が図れないと思い、ある作戦を立てたのです。

 その外資系航空会社のある国の日本大使館が、東京・代官山にありました。私は大使館をアポなしで訪問し「その国の方とお話をしたい」とお願いしました。すると親切な大使館の方は、2時間も時間を割いてくださったのです。

 航空会社の面接では、大使館員のフレンドリーな人柄に親しみを覚えたと話すと、感動した面接官は「いつから入社できる?」と言って、その場で内定が出ました。面接に臨むときには何か1つでいいから、相手に自分を印象付ける努力をすべきだと思います。

堀江社長にYESと言わせる

 それから長距離の国際線で約1年間勤務、客室乗務員としてやりたいことは、すべてやり遂げたように感じました。そこで私は空の仕事に区切りを付け、別の道を歩み始めました。高級レストランのレセプショニストや、秘書の仕事で経験を積むうちに、広報の仕事に興味を持つようになりました。

 偶然、客室乗務員時代の同僚が、オン・ザ・エッジ(現ライブドア)で堀江貴文社長の秘書をしていました。ある日彼女が、堀江社長主催のホームパーティーに誘ってくれました。「社長に会える機会はめったにないし、広報として採用してもらえるかもしれない」と思った私は、喜んで参加しました。当時、堀江社長は29歳。最初は怖い人かと思っていましたが、社員に気を遣わせない気さくな人柄でした。そこでパーティーが始まりしばらくたったとき、「広報をやらせていただけませんか」と堀江社長に直接お願いしたのです。社長は冗談だと思ったようですが、私は本気でした。そこで、パーティーの席で私はゲストからホストになったつもりで細かいところにまで気を配りました。その後も会社訪問やメールで、堀江社長に何度もアピール。ついに、広報担当者として入社させていただいいたのです。

 自分の転職を振り返ると、私は「入りたい会社」に入社しているのではなく、常に「やりたい仕事」にこだわって転職してきました。「やりたい仕事」ができるチャンスがあれば、会社はどこでも構わなかったのです。やりたい仕事をすることが、自分自身をキラキラ輝かせる秘訣だと信じています。

“大好きな会社”を辞めよう

 最近、採用担当者として面接に立ち会う場面が増えてきました。そこでは“プラスの空気を持っている人”に来てほしいと思っています。それは、きちんと相手の目を見て話すとか、面接の部屋に入る前にすでに笑顔になっているといった部分に表れます。よく面接で聞かれる質問の答えを、きっちり文章に書いて準備する人がいます。それを棒読みしたのでは、その人らしさを発揮することができません。そのときの雰囲気を読み取って、臨機応変に対応できる人の方が、好結果が得られるのではないでしょうか。面接でも何でも楽しめる人が魅力的に見えるのだと思います。

 転職を考えている人の中には、今の会社に対しネガティブな感情を持っている人もいるかもしれません。マイナスの気持ちは面接のときに、どうしても表情などに出てしまうものです。今の会社でやるべきことを全部やり遂げれば、きっとその会社を大好きになれると思います。そうすれば自然と新しい目標も生まれるし、面接でもきっと輝いた自分になれるはずです。ポジティブな気持ちで転職活動を行なえば、自然といい結果が付いてくるのではないでしょうか。

(文/角田 正隆)


 
日経BizCEOは、日経Bizキャリアと世界最大の公式MBA組織日本支部を兼務するグローバルタスクフォース(GTF)の共同サイトです。

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