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LEADERS INTERVIEW
『あなたもCEOに必ずなれる!これまでの経験と「縁」をキャリアに変えていこう!』

株式会社アイ・エス・エス
代表取締役 筆谷信昭氏

<<リーダー・プロフィル>>
1990年京都大学法学部を卒業、同年ベインアンドカンパニーに入社。アソシエイト・コンサルタントとしてM&Aのバリュエーション(価値評価)、外資系企業の日本市場参入、営業組織の改編などのプロジェクトに携わる。93年父親が経営するアイ・エス・エスに入社。営業、財務部門を経験した後、98年に同社代表取締役社長に就任。39歳。
<<企業プロフィル>>
1965年、国際コミュニケーションのプロ語学専門家集団として誕生。現在では、通訳・翻訳サービス、国際会議運営、通訳・翻訳者の養成、法人語学研修、人材派遣・人材紹介サービスなど幅広い事業をアイ・エス・エスグループとして展開している。

社長就任から8年。自分が目指すリーダー像を確立した感があるアイ・エス・エス代表取締役の筆谷信昭氏。人との縁、出会いを大切にしながら成長するリーダーでありたいとする、その強い思いを聞いた。

――リーダーシップをどう定義づけますか。

  「大きな方向性を示すことです。家族であっても企業や国であっても、集団としてどういうものを目指すべきか、どのような方向に行くべきかを提示しなければいけません。それぞれが別々の方向を向いていては、トータルのベクトルが分散されてしまいます。1つのグループに帰属する一員として振る舞う場合には、こういう方向に行くべきだということを考え、示し、徹底することがリーダーシップだと考えています」


――--32歳で社長に就任されました。リーダーとして社員や取引先に何か提示されましたか。

  「父親の入院に伴う緊急措置でしたので、すぐには何もできませんでした。しかも、当時は社会全体がもうひとつパッとしない状況だったので、方向性を示しにくい雰囲気もありましたね。ただ、自分なりの判断の中では、アイ・エス・エスが培ってきた長い伝統を生かすことで、プラスの部分がマイナスを凌駕(りょうが)できるはずとの確信はありました」


――その後、リーダーシップをどのように伸ばしてきたのですか。

  「2点あります。第1に、現場での実体験です。部下と一緒になって企業の課題を克服していくなかでリーダーシップとは何かを学びました。もう1点は、多くのリーダーとの出会いからです。自分の中に閉じこもりたくありませんでしたから、積極的に出会いを求めました。仕事を通じて知り合えた方々にしろ、何らかの御縁で紹介いただいた方々にしろ、より人間関係を深めるお付き合いを心掛けてきたのです」


――社長として8年の歳月が経過されました。今の立場をどう感じていますか。

  「リーダーは面白い、楽しいという言葉に尽きます。もうすぐ40歳になるのですが、この8年間、社長として経験したことには正直言ってつらいこともありました。しかし、サラリーマンでは経験できないことも数多くあったのも事実です。日々エキサイティングな出来事の連続なのです。やりがいもあります。たとえ小さな会社であっても、マネジメントに携わることで、社会に影響力を及ぼすこともできますからね。これはモチベーションとして大きいですよ」
  「私は父親が経営していた会社を継承しました。その意味では恵まれていますが、こういう時代には、経営に近いところに踏み込んでいけるのは、本当にエキサイティングなことだと思います。経営者になるということは確かにリスクも責任も大きいです。だからといって、経営者はものすごく優秀な人ばかりでは決してない。私がいい例です(笑)。よく言われることですが、日本は欧米やアジアと比べると、優秀な人材が起業家や経営者でなく、サラリーマンになっている比重が高過ぎると思います。また、いかに優秀な人でも、一つの組織に15年、20年と長く居過ぎると、現実問題としてはそこから突然経営者を目指すことも難しくなる。私もそうでしたが、そのときはささいに感じられる偶然、人の縁、タイミングといったものを生かして、ぜひとも新しい世界に飛び込んでほしいと思います」。
  「私のような例はまれなケースでしょうが、例えば当社で扱っている外資系企業を中心とした人材紹介業では、年齢的に若い方でも経営に近いところで活躍できるポジションが非常に増えています。将来CEOを目指すような人にこそ、ぜひチャレンジしてほしいですね。いきなり日本の大企業を飛び出して起業することには大きなリスクを伴いますが、そういう段階を踏むことによって、経験、見識、人脈など先々のCEOへのキャリアにつながるチャンスや縁が得られると思います」

――新卒での入社先はコンサルティングファーム。これは将来への布石だったのですか。

  「大学を卒業するころに、大前研一氏が執筆した『平成維新』がベストセラーになり、マッキンゼーなど戦略系コンサルティングファームの存在を初めて知りました。愕然(がくぜん)とし、強い興味と憧れを抱いて応募したなかで、ベインアンドカンパニーからオファーをいただいたのです。大手生保からも内定をいただいていましたが、100倍もの競争率の中から自分を選んでくれたベインに何か偶然の縁を感じたといった方が自然だといえるかもしれません」


――ご自身は、どのようなリーダーでありたいと考えていますか。

  「リーダーとしてのあるべき姿は『どのような方向に行くべきかを考え、示し、徹底すること』だと述べましたが、自分の目指すリーダー像がこれに完全に一致しているわけではありません。人それぞれの生き方があるように、リーダーのあり方も様々であって良いはずです。私が目指しているのは『縁』や『めぐりあい』を大切にするようなリーダーです。『アイ・エス・エスとのめぐりあいが、その人のその後の人生にとって何らかのプラスになった。ハッピーになった』と言われるようになりたいのです。そのためにも、さらに自分自身を磨いていかなければいけません」

――アイ・エス・エスグループのリーダーとして今後何をしていきたいですか。

  「グループとしてのビジョンを再定義するにあたり、教育部門、プロフェッショナルサービス部門、人材部門という3本の大きな柱の下、日本に貢献することを強いメッセージとして伝えていくことにしました。日本が良くなるために有益なことをしていきたいのです。日本はやはり人材が資本です。私たちは良い教育、人的ネットワーク、仕事の機会を提供することを通じて、日本の産業や経済の発展に貢献する人材、国際社会における日本の役割の向上に資する人材の育成を手掛けていきたいと考えています。創業から40年間の事業活動を通じて、それなりの自負もありますからね」
 「特に今後は国際社会での日本の地位向上に向けて貢献しえる事業をつくり上げていきたい。1989年に設立されたアイ・エス・エスL.A.校はMビザ(職業訓練ビザ)の発給資格を持っています。ここを拠点に、日米間の人材交流の懸け橋としての活動を広げていきたいものです」

(取材・文 袖山 俊夫)
日経BizCEOは、日経Bizキャリアと世界最大の公式MBA組織日本支部を兼務するグローバルタスクフォース(GTF)の共同サイトです。

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