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LEADERS INTERVIEW
「人間の資質に大差はない、やり続けるなかで大切な意味を感じ取るものだけが成功できる」

株式会社
ウィークエンドホームズ社
代表取締役社長 
森本剛民氏

<<リーダー・プロフィル>>
米国ホーリーネイムズカレッジを卒業した後、米国に留まりアサヒビールに入社。営業担当として「スーパードライ」の北米市場の開拓に貢献。帰国後、日本能率協会やプラウドフットジャパンでコンサルタントとして活躍。その後、経営者修行として中堅企業向けコンサルティング会社の社長に。クライアントとの縁でレストラン経営にも携わる。2000年10月に建築サービスベンチャー企業、ウィークエンドホームズ社を設立。同社代表取締役社長に就任する。座右の銘は「まさか命はとられまい」。41歳。

<<企業プロフィル>>
2000年7月に消費者向け建築ソリューションサービスサイト、「Weekend-homes.com」を設立。約1800社の登録建築家と約400に上る施工会社とのネットワークを通じて、高品質な注文住宅づくりを推進。サイトを設立した2000年7月からの約5年間で、取扱高200億円の実績を上げ、国内に新たな建築需要をつくり出している。今後は、デザイン設計力という強みを発揮し、不動産金融と建築を融合した「専門家を使う専門家集団」として進化したいとする。


「人のために死ぬほど働けるのであれば、自分のために働いたらもっとすごい業績を残せるのでは」という思いから独立。米国で学んだ発想を生かし、「幸せにこだわる」家族の夢を応援する「建築サービス会社」という視点を導入。「感動経営」をモットーに経営の舵を取る森本剛民社長のビジネススタイルを聞いた。


――ウィークエンドホームズ社設立までの森本社長のキャリアは実に多彩ですね。

  「とにかく、どこにいても与えられたミッションをクリアするために仕事は徹底的にやりました。アサヒビールでは社内ベンチャー企業を体験しているようなもので、仕事が面白くてほとんど寝ないで働くこともよくありました。日本能率協会では、建設機械メーカーの企業体質改革プロジェクトを担当、全国76営業所を行脚しながら成功に導きました。プラウドフットジャパンではルーキーオブザイヤーに輝いています」

――ウィークエンドホームズ社のビジネスアイデアは何がきっかけで生まれたのですか。

  「飲食業に携わったことが大きかったですね。レストランを新規出店するにあたり、商空間デザイナーのコンペを開催すると、どれにしようか迷うほど素晴らしいデザインが提案されてくる。内装担当も、仕事が速いばかりか期待以上に付加価値の高い仕事をしてくれる。これがごく普通のこととして。これを商空間以外で展開できないものかと考えました。それがIT(情報技術)を活用した注文建築です。1999年にレストランの常連客から米国の最先端ネット企業20社の視察ツアーに誘われ、各社の経営陣に会う機会があったのですが、これからを考えるとITは外せないと確信していました」

――ネットを通じて、情報をディスクローズ(開示)していく取り組みだともいえますね。

  「建築に携わる人々は、もっと説明責任を果たすべきです。現状は、住宅のサプライヤー側が情報の格差を利用して、消費者である施主側にブラックボックスを押し付けているようなもの。もちろん、ネット上ですべての建築ノウハウをオープンにしようと言っているわけでもありません。守るべきことは守って良いのです。まずは、サプライヤーが襟を正すべきです。ただし、同時に施主側も自分の意見をもっと明確にしていくべきでしょう。日本の消費者はもっと成熟しなければと強く思います」

――森本社長にとって、家づくりとは何ですか。

  「家づくりとは家族を建てていくこと、家族の生活をつくり、人生をつくることです。未来の日本を育てることにもつながると信じています。住宅建築というビッグプロジェクトを終えた家族は、いずれも以前より深みがある気がしてなりません。『家族を建てる』という言葉に40、50代の方は確実に反応してくれます。家づくりを通じて、これまで自分は子供の将来について本当にまじめに考えたことが何回あるだろうかと思いを巡らすようです。実際、子供のことを語れる時間は、なかなかないでしょう。家を建てる時が唯一のチャンスなのかもしれません。一生懸命語り合うことで、家族の中に新たな何かが生まれてくるはずです」
 
――業績は順調に拡大していますね。

  「36歳で勝負をかけて以来、ここまで走り抜けてきましたが、気がついたら大きな広がりになっていました。業績は200%拡大。登録建築家も1800名を超えています。戦略の定石からすると逸脱している部分があるかもしれませんが、確かな手ごたえでいっぱいです。コンサルタントの角田識之先生からは、当社が手掛けているのは『企業』ではなく『事業』だと指摘されました。『企業を船に例えると、(事業は)船が走る海そのものだ』と。これからもイノベーター・フォー・カスタマー(お客様のために進化していく)を指針に、形をいろいろ変える『水の如く』、たくましさを持って進んでいきたいと考えています」

――ウィークエンドホームズ社のこれからのビジョンを聞かせてください。

  「一級建築士の方々のひたむきさ、頑張りにこたえていきたい。彼らほど施主の夢に付き合う住宅プレーヤーはいませんから。ただ、専門的なサービスを提供するプロフェッショナルであるという意識をもっと持ってほしいと思います。プロジェクト発想や仕事の標準化に関する知識を身に付け、世界と渡り合える建築家になってほしいですね。そのための応援はしていくつもりです」
 「また、せっかく1800名を超える一級建築士のコンソーシアムをつくり上げたのですから、環境や人間関係に対して建築は何ができるかを問いかけていきたい。高齢化社会を迎えるなかで、昨今話題になりつつあるジェロントロジー(老人学)という概念も取り入れ、幸せな家つくり、街づくりを追求したいものです。その意味では、当社は建築のシンクタンカーというポジションを目指していると言えます」

――ビジネスリーダーを目指す方々への提言をお願いします。

  「『一生懸命に生きませんか』と呼び掛けたいですね。実際のところ、人間の資質や可能性には大差はありません。では、なぜ差ができるかと言えば、情熱であり、何があってもやり遂げるという意志があるかどうかです。要は続けることが大切だということ。続けた人だけが大切な何かをつかみとり、成功します。この継続を支えてくれるものは何でも良いでしょう。私の場合は、様々な可能性を持った面白いメンバーに日々出会えることですね。事業を通じていろいろな人との出会いのプラットホームをつくり、これが結果として大きな価値をもたらしているのです」

(取材・文 袖山 俊夫)
日経BizCEOは、日経Bizキャリアと世界最大の公式MBA組織日本支部を兼務するグローバルタスクフォース(GTF)の共同サイトです。

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