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LEADERS INTERVIEW

「ビジネスリーダーとして
人を包み込む力を培ってほしい」


株式会社プロフェッショナルバンク
代表取締役社長

上田宗央氏

<<リーダー・プロフィル>>
1948年生まれ。富山大学薬学部を卒業。日本ブリストル・ラボラトリー(現ブリストル・マイヤーズ)、ミドリ安全を経て1983年テンポラリーセンター(現パソナ)に入社。米国法人社長を経て2000年に代表取締役に就任。04年8月に非常勤取締役に。同年10月、プロフェッショナルバンクを設立。代表取締役社長に就任する。現在58歳。

<<企業プロフィル>>
プロフェッショナル人材専門の転職支援サーチファーム。10年以上の人材ビジネス経験を有するキャリアコンサルタントが、意欲溢れる人材と魅力ある企業とのマッチングを信条に転職者を様々な角度からサポートする。プロフェッショナル人材サービス、会計・経理事務所向け求人サイトサービス、女性のキャリアに特化した転職支援サービスなどの事業を展開する。URLはhttp://www.pro-bank.co.jp/


活力ある日本社会づくりに貢献したいと56歳で起業した株式会社プロフェッショナルバンク代表取締役社長、上田宗央氏。人を包み込む能力を持つビジネスリーダーになるためには、何を学ぶべきかを聞いた。


――リーダーシップをどう定義付けされますか。

  「私はリーダーシップとは人を包み込む力と定義しています。柱は3つです。第1に『理解力』。特に弱い立場の人、困っている人の話を分かってあげること。第2に『説得力』。論理的に分かりやすく構成する力。そして第3に『倫理観』。大義、正義を持っていることです。自分自身でも、この3つを心掛けるようにしています」
「リーダーになるためにはすべてがパーフェクトである必要はありません。といってもいずれも平均点では務まりません。仮に1つが平均以下であったとしても、他が最高点であれば良いといえます」


――リーダーとしての上田社長、自己採点はいかがですか。

  「説得力と倫理観には自信があります。理解力は不十分かもしれません。聞く耳を常に掃除をしておくように。感情というシールバリア(防御壁)を釘でつつけと、いつも自分に言い聞かせているほどですから」
  「説得力という点では、仮説構築力を何よりも重視しています。課題を見つけること、課題を鮮明にすることを心掛け、その上で人に分かりやすく魂を入れて話す、やってみせる、実行するようにしているつもりです」
  「また、倫理観という点ではギブ・ギブ・ギブ(give・give・give)の精神に徹しています。テイク(take)は一切求めないというスタンスです。ビジネスで成功するためには幸運が必要ですが、幸運はつかもうとしてつかめるものではありません。むしろ、幸運がやってくる機会を大きくすることが大切だといえます。そのために、私自身は自分ができることをすべてやってあげることにしているのです。ビジネスリーダーはいずれも広く深くかつ強い人脈を持っています。人脈の基礎、原点はどのくらい人にギブ(give)したか、貸しがあるか、知恵を授けたかだといえるのではないでしょうか」


――これまで数多くの新規事業を手掛けてこられたのも仮説構築力を重視されたがゆえですね。

  「自分でやりたいことに関して仮説を構築し、ビジネスモデルとして打ち立てるのです。世の中にまだ存在しないけれど、こうすれば人々に喜ばれるのでは、売れるのでは、拡大するのではと思いを巡らしていく。やはり、新しくなければ意味がありません。新しいビジネスモデルを作り、それがインフラになることを目指していきたいのです。考えたらやってみたくなるじゃないですか」
  「プロフェッショナルバンクもそうしたプロセスを経た上で設立しました。数多い団塊世代が自分の得意技を生かして元気に活躍し、周囲から尊敬されるような存在でいられたら、若い世代にも良い影響を与えることができるのでは、という仮説からスタートしたのです」


――ギブ・ギブ・ギブ(give・give・give)の精神は何がきっかけだったのですか。

  「20代のころにボランティアでベトナムのホーチミン市(旧サイゴン市)に滞在したことがありました。まさにベトナム戦争末期というタイミングですよ。そこで人間の断末魔を見たのです。もう想像できないような人生模様でしたね。彼らの生き様と比べたら、私を含めて日本人は何と幸せなのかと痛感させられました」
「それまでは私自身も貪欲に求めて生きてきましたが、それは単に持てるもののわがままでしかないということに気付いたのです。その時以来です。求めるのはやめよう、むしろ相手に与えるようにしようと考えたのは。もらう給料の半分は人のために使うようになりました。自分のためにはほとんど使いませんね。おかげで、あまり嫌われることもありません」
  「むしろ、会って良かったと思っていただくことが多いのです。友人もしかり、ビジネスパートナーもしかりです。その意味ではギブ・ギブ・ギブ(give・give・give)の精神は間違いなく、私自身が生きていく上でのエネルギー源だと言っても過言ではありません」


――優れたリーダーを目指すために、何を学ぶべきだとお考えですか。

  「仕事とは資産を作り、それを増やすことです。資産には2つの種類があります。1つはオカネ・モノといった『目に見える資産』。もう1つは人格形成、知識、ノウハウといった『目に見えない資産』です。いずれも重要なのですが、リーダーを目指すためには後者の資産を増やす努力を怠ってはいけません」
  「人格を培うためには、信用できる会社や人と付き合う。信用できる仲間を作ることです。何かをテイク(take)しようとする会社や人は信用できません。お互いに持ちつ持たれつという気持ちがあって、初めて信用関係が構築できるというもの。両者がポジティブ、ウィン・ウィンになれるのです」
  「ノウハウという意味では、これからのビジネスのリーダーシップを取るためにも仮説構築力は欠かせません。ベンチャー企業のリーダーは、いずれも課題を発見した上で仮説を構築する姿勢が強く、新しいことをやってやろうという思いにあふれていますからね」


――仮説構築力を高める方法論を教えてください。

  「ぜひとも10倍発想をお勧めします。人間は誰しも自分という器の中で仮説を作るものです。しかし、自分が経験した範囲だけでは新しいビジネスモデルは生まれるものではありません。とりあえず自分は何でも『10倍あるもの』として思考をスタートしてみることです。オカネ、人も10倍使えるという発想で思い描いたモデルと、現実とのギャップを乗り越えるためにどう工夫すれば良いかを考えてみてください」

(取材・文 袖山 俊夫)

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