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LEADERS INTERVIEW

成長へのモチベーションを鼓舞しながら、自分の『思い』や会社の
『ありたい姿』を描こう


株式会社セルム

代表取締役社長
磯野卓也 氏


<<リーダー・プロフィル>>
1961年生まれ。84年3月法政大学経済学部を卒業。同年4月リクルートに入社。リクルート映像に出向し、営業および新規事業の立ち上げ、チャネル管理に携わる。その後、日系コンサルティング会社を経て、95年12月、松川好孝・現会長らとセルムを設立。2005年4月代表取締役社長に就任する。現在45歳。

<<企業プロフィル>>
経営を取り巻く環境に精通したコンサルタントのネットワークを生かし、顧客の課題に最適なコンサルタントをアサインしながら、課題解決の方法を提供するコンサルティング会社。経営戦略、マーケティング戦略、事業開発、商品企画、生産工程改善、人材開発、組織開発など、あらゆる分野をサポートする。笑顔の創造、社会的意義の確立、自己実現の追求と3つの基本理念を掲げる。URLはhttp://www.celm.co.jp 。


「リーダーになるための近道はない。あくまでもプロフェッショナルに徹し続けることだ」と説く株式会社セルム代表取締役社長、磯野卓也氏。「ありたい姿に向かって真剣であって欲しい」と強調する。


――セルムを起業された、きっかけは何でしたか。

  「起業に向け、34歳はギリギリのタイミングでした。やはり、自分のユートピアは自分で作るしかないのではと。創業メンバーそれぞれのスタイルや価値観が微妙に違い、たとえリスクがあったとしてもやろうと思いました。やらなかったことを後悔するよりも、やって失敗した方が納得できるはずだと考えたのです。おかげで今は、毎日がナチュラルハイですよ」


――リーダー養成プログラムにおける豊富な実績をお持ちですが。

  「セルムには、コンテンツがありません。顧客のニーズ、本当にあるべき姿を深く理解し、その上で1つ1つのプログラムをオーダーメード、カスタムメードで作り上げていきます。リーダー育成にしても、それぞれの会社なりのニーズがあります。それを理解し、具現化するお手伝いをしているのです」
  「組織は2・6・2で構成されているとよく言われます。これまでセルムでは全体の2割を占める最上位の人材を育成するサポートをしてきました。しかし、最近では私たちの顧客は、むしろ全体の6割にあたる中間層を何とかして欲しいと願っています。中堅、中間管理職向けのマネジメント力、組織力向上プログラムなど中間層への方策が増えてきたのもそのためです」


――自社内ではどのように人材を育成されているのですか。

  「社員らそれぞれの業務内容、役割、給与に合わせて、プロフェッショナル、スペシャリスト、エキスパートと3つの職種に分けています。これは2005年4月からスタートした制度です。総合職、特別職、一般職という呼称でも良いのですが、これではどうしてもモチベーションが下がってしまうと考えました」
  「人は原則、誰もが成長したいと願う生き物です。ところで、成長とはいったい何でしょうか。人は適切な目標をクリアした時にやりがい、達成感を感じるものです。この場合、目標設定が鍵となります。私は、本人が有する実力の10〜15%ほど背伸びしたところに設定するのが最適だと考えています。リーダーとして、常に社員らの実力を見極め、その上で最適な目標を設定すること。この点を心掛けるようにしています。処遇は制度で、モチベーションは仕事の中味や環境で応えてあげたいのです」


――他にビジネスリーダーとして心掛けていることはありますか。

  「ありたい姿を提示するということです。会社として中長期的に何を目指すのか、そこにたどり着くための戦略・戦術・施策をいかに考えているかを社員らに提示していきます。欧米では、これを『ビジョナリー経営』とでもいうかもしれませんが、私は『ビジョン』という言葉はあまり好きになれません。むしろ、『思い』とか『ありたい姿』という言葉の方が相手にしみる、説得力が増すと思いますね。セルムはモノを作っている会社ではないので、社員らの意欲を鼓舞するには言葉、行動で指し示さなくてはいけません。どんな言葉なら、相手に伝わるかには人一倍神経を使っているつもりです」


――ご自身が目指すリーダー像を聞かせてください。

  「私は、リーダーとしての訓練を受けたことはありません。そのせいでしょうか、リーダーという偶像にあてはめるのではなく、むしろプロフェッショナルとして徹底することが重要だと考えています。社員らにも、『真面目にではなく、真剣に仕事にあたって欲しい』とよく言っています。真面目というのは、単に時間を消化するだけ、言われたことしかやらないものです。それではダメです。目の前のことに没頭しながら、言行一致をやりきる。これを体現するのが真剣さなのです。仕事を通じて自己成長したいと強く思っていれば、当たり前かもしれませんが」
  「リーダーとしても同様です。自分自身がいつも真剣でいるしかないのです。真剣にやっている姿は、必ずや周囲に良い影響を与えるはずだと信じています」


――ビジネスリーダーを目指す読者にアドバイスをお願いします。

  「これをやったら、リーダーになれるというものはありません。もし、あるのであれば教えて欲しいくらいです。それではアドバイスにならないでしょうが…。少し先を見る、上位の視点から長い物差しで見るということですかね」
  「リクルート時代には、トップが出す戦略に対して、『なぜそうなのか』『これは、どのような意味なのか』と本人にでなくても上司に聞きに行ったものです。何しろ、昔から性格的に腹に落としこまないと納得いかないタイプでしたから。その上で、『自分ならどう考えるか』『むしろ、こうやるのでは』と思いを巡らしてきました。これは、他社の事例でも良いのではないでしょうか。『自分が、あの会社でそのポジションを任されたらどうするだろうか』とイメージしてみるのです。感情移入しながら、シミュレーションをしてみる。必ず良いトレーニングになるはずです」
  「『これだ』というものを見いだすことができたら、アクションを実際に起こしてみること。私の場合、自分がやると決めたら退きません。とことん突き進んでいきます。他人事ではなく、常に当事者意識を強く持つことをお勧めします」

(取材・文 袖山 俊夫)

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