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LEADERS INTERVIEW

「一緒にいたら何か楽しそうという期待を抱かせる
魅力的なリーダーになりたい」


株式会社アクア
代表取締役社長
特定非営利活動法人
コモンビート発起人・理事長
中島 康滋氏

<<リーダー・プロフィル>>
1972年生まれ。24歳で独立系ミュージシャン(インディーズ)音楽をネット配信するベンチャー企業を起こす。3年間で資本金1億円、社員30人以上の規模まで拡大するものの、29歳で会社を売却。「30歳から新しい自分を始めたい」と地球一周の旅に出る。2001年1月、携帯サービス事業を柱とするアクアを創業し、代表取締役社長に就任。2004年3月には特定非営利活動法人(NPO)コモンビートを立ち上げ、以来理事長として組織をリードしている。

<<企業プロフィル>>
アクア
1人ひとりのバージョンアップに最適な環境を構築することが企業のミッション。「自分磨きバイブル」「心と体のリセット術」などバージョンアップ(自己成長)に関するコンテンツの提供、会員サービスの運営、マーケティングコンサルタント業務および代理店業務などさまざまな事業を展開する。URLはhttp://www.acquainc.jp
コモンビート
感受性を豊かにし、創造活動を通じて互いに学びあう「共育(共に育む)」活動を展開するNPO法人。国籍や性別、環境、年齢などの異なる会員がミュージカル、工房、ダンスなどさまざまなプロジェクトに参加するなかで、自主性や協調性を学ぶとともに、感受性をより高めていく。06年7月14日−16日まで、文京シビックホールにてミュージカル「A COMMON BEAT」東京公演を開催。URLはhttp://www.commonbeat.org



世界一周の旅を通じて自分の生き方をリセット。その体験をベースに「個人のバージョンアップ」を支援する事業をスタートさせた株式会社アクアの代表取締役、中島康滋氏。企業経営者とNPO理事長という2つの立場を兼ねるなかで、自身もリーダーとしての自己成長を追求してやまない。中島社長に、目指すリーダー像を聞いた。


――30歳を前にしての世界一周。きっかけは何でしたか。

 「24歳で起業し、29歳で会社を売却しました。音楽配信という自分が思い描いた事業をやっていましたが、バブルが崩壊したこともあり、自分が目指したものとのギャップを感じざるを得なかったのです。このまま30代を迎えては面白くない。もう一度、自分の足場を見直して、自分は何をしたいのかと考え直す時間が必要だと考えました。これまでを生かしながらも、これまでの考え方を捨てて、基本に帰って前に進むべきだと」
 「会社の合併が終わったのは、29歳の誕生日でした。でも、気分的にはかなり落ち込んでいましたね。来年の誕生日こそは、多くの仲間に囲まれ、海外でワクワクしながら過ごしたい。30代を最高の環境で始めたい。そのためにも、新たな環境に身を置きたかったのです。その答えが地球一周の旅でした。この旅のスケール感は色々な意味で自分を変えてくれるに違いないと思ったのです」

――地球一周の旅を通じて得たものは何ですか。

 「地球という大きさを実感しました。どのようなビジネスをしようが、この地球の上でやっているんだなと。10カ月をかけて22カ国を回り、さまざまな人々と触れあうことで自分の考え方をリセットすることもできました。社長でいること、狭い業界内で満足してしまうこと、日本においてビジネスを展開すること・・・いつの間にか毎日訪れる日常に慣れてしまっていた自分の視点を大きく変えてくれたといえます。これからの生き方のスタートラインが見えたといったところでしょうか」
 「私自身、30歳で自分をリセットするという経験ができたことは素晴らしいと思っています。人は前に進む時に自分自身をリセットすることが大切ですからね。自分を変えて、より良くしたいと思うからこそ色々なことにチャレンジして新たな発見に触れていく。その意味でも、多くの選択肢、可能性に触れることの重要性を知りました」

――その時の思いが、アクアの事業ドメインとして結実していくのですね。

 「アクアでは『よりよい自分になること』をバージョンアップと呼んでいます。現代社会では、価値観が多様化しつつあり、人はそれぞれの夢やゴールを追い求めています。しかし、『継続的な行動』がなければ目標に到達することはできません。例えば、人生本を読んでも、その瞬間がピークになるだけで、課題は何も解決されないものです。真剣に課題と向き合うために、もっとうまく動きをリマインドできたら面白いのではと思ったのです。もし、動きが続かないのなら、『なりたい自分』になれるようなコンテンツを毎日投げかけてあげたら意識付けができるのではと。その人にとって一番の自己実現の手助けができる気がしたのです」

――地球一周からの帰国同時に、コモンビートというNPOの活動も始められましたが。

 「企業ができないけれど、NPOなら追求できることがあります。自分磨きをビジネスとして成功させるためには、どうしても数字を追求しなければいけませんから。コモンビートは『チャレンジの場」であり『成長の場』です。日常ではなかなか経験できないテーマにチャレンジするなかで自分の可能性を伸ばしていく機会を提供しています」
 「現在、会員は350人ほどいますが、組織体系は企業と明らかに違います。企業はトップダウン型が多いのですが、NPOは完全にボトムアップ型です。全員の思いをどこにもっていくかが大切になります。理事も含めて会員は20代が多くを占めています。彼らの熱い思いをいかに世の中に向けていくか、彼らの意思を社会のためにどう方向付けてあげられるか、非常にチャレンジナブルなのです。雇用体系に囚われず関係する人の熱意だけで事業を展開していくという、こうした経験は企業では体験できませんね」


――今後、どのようなリーダーになりたいとイメージされていますか。

 「この人といたら何か楽しそうなことが起こりそうだ!と思ってもらえるリーダーになりたいですね。互いの関係はこれに尽きると思います。どちらかといえば、私はしなければいけないことよりも、楽しいことを探してきた人間だからなのかもしれませんが、仲間とも、こうした意識を共有したいのです」
 「メンバーとの関係を変えられるリーダーでありたいですね。自分がリーダーだと意気込む人が多いのですが、先頭に立って走るだけがリーダーではありません。リードしていきたい人間をうまく誘導していくことが重要なのです。そのためには、時にはリーダーでないフリをしてみることも必要でしょう。社長だから、リーダーだからと肩書きや責務にこだわらず、自分の立場を時には譲る度量も持ち合わせ、より多くの力をまとめあげる、ベクトル付けするリーダーになりたいですね」

――人をひき付ける魅力にあふれるリーダーになるためには、何を心掛けたら良いのでしょうか。

 「自分自身が何をしたいのか、なぜしたいのか、これらを熱く語れるようになることです。よりスケールの大きな世界にチャレンジしていくと、自分のスケール感は自ずと大きくなるものです。それと同様に、会社にしろ自分にしろ、バージョンアップしていくためにはどうするべきかを語れる人たちと一緒に時間をシェアすることが大切だといえます。そうすることで、自分の思いもより洗練されるとともに仲間と共有しあえるようになるからです。こうしたプロセスを楽しいと思える人こそ、リーダーだといえるのではないでしょうか」

――次世代のリーダーを目指す読者に向けて、何かメッセージをお願いします。

 「成功した多くの人々が指摘しています。『夢は話した方が実現する』と。ほとんどの人は、言ったら夢がまねされてしまうと出し惜しみしがちです。でも、たいていは数人が同じアイデア、夢を持っているもの。実現しないとただの想像、妄想で終わります。逆に、言えば言っただけ、共感して仲間が増えていくのです。いろいろなつながりが自分の力を超えて自然と広がっていくのです」
 「自分の夢は原石だと思えば良いのではないでしょうか。より多くの人と語りあいながら、化学反応させていけば良いのです。自分の中に隠すよりも、必ず大きくなって帰ってくることを実感できるはずです。自分が考えている意見を、相手がさらに大きなアイデアにしてキャッチボールできるなんて、素晴らしいじゃないですか」

(取材・文 袖山 俊夫)
日経BizCEOは、日経Bizキャリアと世界最大の公式MBA組織日本支部を兼務するグローバルタスクフォース(GTF)の共同サイトです。

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