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LEADERS INTERVIEW
for Career Management

若者のほうがマネジメント向き

株式会社ベネフィット・ワン
代表取締役社長 
白石 徳生 氏


1967年東京都生まれ。89年拓殖大学経済学部卒業。海外でインターンなどを経験し、90年テンポラリーセンター(現パソナ)の関連会社に入社。96年、パソナの社内ベンチャー第1号として、ビジネス・コープ(現ベネフィット・ワン)設立、取締役就任。2000年同社代表取締役社長就任。04年ジャスダック上場。06年3月東証2部上場。

リミット寸前の目標達成

 福利厚生のアウトソーシングサービスを提供するベネフィット・ワンは、パソナの社内ベンチャー第1号として、1998年にパソナと三菱商事などの出資で設立しました。その後2004年にジャスダックへ上場、2006年3月には東証2部上場を果たしました。グループ全体の会員数は約200万人になっています。

 ビジネスモデルは、当社が宿泊・レジャー施設と一括契約することで、会員は施設を安く利用できるといった福利厚生サービスが受けられ、会員1人あたり一定の会費をクライアント企業から受領するシンプルなもの。しかし、立ち上げ期は思ったほど会員が増えず、赤字続きで苦労しました。

 パソナから厳命されていたのは2年以内の黒字化です。いよいよ期限が近づいてきたとき、私は月間約2000万円のコストを800万円にする大リストラを決断。社員も半分以下に減らしました。幸いなことに社員の多くが出向者でしたから、真正面から事情を話し、戻ってもらったりもしました。それでもこのときはつらかったですね。

 営業面では、最初は福利厚生が充実していない中小企業をターゲットにしました。保養所が使えるといった点にメリットを感じていただき、契約は取れたのですが、何せ社員数が少ないため会員数が増えません。後悔したくないという思いから、当たれるだけ当たり、残すターゲットは大企業だけになりました。黒字化を達成するため一気に大型契約を取るしかない事情もあったのですが、実際に大企業にアプローチしてみると、自社保有の宿泊施設の稼働率低下に頭を悩ませているなど、かなり大きな手ごたえを感じました。

 とはいえ大企業は慎重で、「あの会社が使っている」という具合に、セカンドオピニオンを重視する傾向があります。必死の営業活動を続け、ついにある大企業の受注に成功。それをきっかけに、次々と大企業との契約を獲得し、創業24カ月目、初の黒字化を達成することができました。これが最初の山でした。


『進化論』をベースに置く

 経営者の判断には、変えてはいけないものと、変えていいものがあると思っています。これも立ち上げ当初の話ですが、会社設立時のプランでは、福利厚生施設の案内や宿泊施設の申し込みなどをインターネットで提供しようと考えていました。

 ところが当時は、インターネット環境が現在ほど整備されておらず、ほとんどインターネットは利用されていない状態でした。そこで方針をすぐに切り替え、急きょ紙のカタログを制作し、コールセンターで受け付けるようにしました。

 また、当社のビジネスモデル自体、最初のイメージから修正を行っています。設立時の社名をビジネス・コープとしたように、「サラリーマンの生協」のような共同購買などをイメージし、「10兆円の流通マーケットを作る」というビジョンを掲げていました。

 福利厚生は共同購買の切り口の1つだったのですが、実際に営業してみると、福利厚生の方がスムーズに受け入れられたため、現在のような福利厚生のアウトソーシングが主力になっています。確かに福利厚生を最初のステップにしましたが、巨大な流通マーケットを作るというビジョンに変わりはないんです。会社の根本ともいえる経営理念は変えるべきではありませんが、ビジネスモデルや手法は、環境に合わせて臨機応変に変えるべきだと思います。

 変わるという意味では、私は経営を考えるうえで「進化」をキーワードにしています。ダーウィンの『進化論』のように、生物は環境に適応するため進化し、必要とされないものは滅びます。自然から生まれた人間が作った経済も、この『進化論』の原理原則は変わらないものだと信じています。


自分をベンチマークする

 こうした基本的な考え方やマネジメントの基礎は、以前に在籍していた、パソナグループの社員時代に身に付けています。その会社は小さな組織で、入社2年目にもなると私が会社の幹部になり、約10人のメンバーをマネジメントする立場になりました。その経験から私が気づいたのは、若い人のほうがマネジメントに向いているということです。

 根拠は2つあります。1つは、本人が「熱い情熱」を持っていて、メンバーを鼓舞できること。これは年齢を重ねるごとに失いがちですから、私もそうならないよう戒めています。過去には情熱が生み出す正義感を失い、業界全体がおかしくなったという例もありますからね。

 2つ目は何事も自分のものにする「吸収力」があることです。若い人はいい人と出会い、一流の考え方を学ぶチャンスがたくさんあります。誰と出会うかによってその後の人生が大きく変わるものです。私も20代のうちに何人か尊敬できる人物と出会う機会があり、パソナグループの南部(靖之)代表もその1人。南部さんからは、大義名分を持つこと、社会貢献することの大切さを教えていただきました。20代のうちは特に、人との出会いを大切にしてほしいですね。

 私も20代のころは、よく勉強会などに参加したものです。現在政界で活躍しているような人や、外資系企業で高額年収を稼ぐような人とも出会いました。でも彼らに「絶対ビジネスでは負けたくない」という気持ちで努力してきました。こんな風に刺激を受けたり、自分をベンチマーク(能力測定)する機会が得られたことがプラスになったと思います。

 最後に、今後CEOを目指す若手ビジネスパーソンには、何でもいいんですが、「人の長所をみつける」「調子に乗らない」といったいい習慣を毎日続け、一生の“財産”にしていただきたい。私にもそういう財産が何個かありますが、その中の1つに「今日やるべきことは今日やる」があります。打ち合わせして、ちょっとしたお願いごとをされたとき、大半の人はそれを忘れてしまったり、そのままにしてしまいます。それを翌日の午前中などにサッと片付けておく。その積み重ねによって、あなたも周囲から信頼される人物になれるでしょう。


「マネジメントは理屈じゃない」

 書店に行くと「部下を○○する法」「コーチング○○」といった、マネジメントの“ハウツー本”が大々的に並べられている。それだけ需要があるということなのだろうが、20代半ばから部下を率いてきた白石氏は、「人は感情で動きます。理屈では人は動きません」と小手先のテクニックを否定する。確かに理詰めで頭が納得したとしても、実際に体が動くことは別問題のような気がする。白石氏のように多くの人と出会い、精神面を鍛えることのほうが重要かもしれない。

(取材・文/角田 正隆)

日経BizCEOは、日経Bizキャリアと世界最大の公式MBA組織日本支部を兼務するグローバルタスクフォース(GTF)の共同サイトです。

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