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LEADERS INTERVIEW

「あるべき姿を提示し、
挑戦せざるを得ない環境を
自ら創り出すことが使命」


株式会社ポッカコーポレーション
代表取締役社長
堀 雅寿氏


<<リーダー・プロフィル>>
1953年生まれ。76年慶応義塾大学大学経済学部卒業。同年、富士ゼロックスに入社。在職中に企業派遣で慶応義塾大学大学院経営管理研究科(慶応ビジネススクール=KBS)に入学。87年に修了し、MBAを取得。90年から日本総合研究所にて経営コンサルタントとして活躍。2001年ポッカコーポレーションに取締役企画室長(非常勤)として入社。専務取締役を経て、05年12月同社代表取締役社長に就任する。

<<企業プロフィル>>
▲1957年レモン飲料で創業。以来、「お客様にいつも感動を提供する」を経営理念に掲げる。代表的な商品には、ロングセラー商品「ポッカレモン」、「ポッカコーヒー」や「じっくりコトコト煮込んだスープ」などがある。2005年にMBO(マネジメント・バイ・アウト)をし、3年後の再上場を目指す。http://www.pokka.co.jp/

――理論派として知られる堀社長ですが、KBSで得たものは何でしたか?

 「勉学面では経営学を基礎から体系的に学び、『本質を考え抜く力』を得ることができました。ケーススタディーにかなりの時間を割きましたね。いろいろな会社の成功事例、失敗事例を通じて議論を闘わせていくのですが、『堀は違うな』と言わせたいと思っていましたから、毎日深夜2時、3時まで頑張って勉強ました。それでも授業では簡単に論破されてしまうことが多々ありました。次は自分の存在感を発揮したいという欲があったからこそ、最後まで続けることができた気がします」
 「人脈を培えたことも大きな財産になっています。KBSのOB会長を引き受けたこともありますが、同窓生のネットワーク、人脈は国内のビジネススクールでは最高レベルにあるのではないでしょうか。他を圧倒するほどです。彼らとの関係は、今も脈々と生きています」


――経営コンサルタントから事業会社であるポッカの取締役に転進されました。転職の意図は何でしたか?

 「40代前半にはもう一度、事業会社で活躍したいという気持ちがありました。ただ、実際に前社長から打診された時はもう40代後半でしたし、今からでは難しいのではと最初は誘いをお断りしたのです。ただ、私自身が名古屋の出身ということもあり、地元企業であるポッカには愛着がありました。それに前社長の誠意もあって、日本総合研究所のコンサルタントとして週1、2日程度ならということで、経営のお手伝いをすることを決めたのです」
 「それでも、事業会社に行って骨を埋める自信は毛頭ありませんでした。正直言えば、経営を軌道に乗せた時点で終わりになると思っていたものです」


――取締役、専務、そして社長へと昇格。骨を埋めざるを得ない立場になられました。

 「参画してから業績が1年で急拡大したのです。私が何かをしたという以上に社員1人ひとりの努力が大きかったといえるでしょう。素晴らしい潜在能力を発揮してくれたのです。これはもったいないと思いました。もっと工夫すれば、さらに良くなるのではと。それに社員の純真さに打たれましたね。愛社精神がとにかく強い。ますます会社が好きになり、これからも一緒に頑張っていきたいという意欲が自ずと沸いてきたのです」


――社長就任時の抱負に、脇の甘い社長になりたいとおっしゃられたとのことですが。

 「専務から社長に就任したある時、『最近、話しにくくなった』と言われたのです。ショックでした。自分の態度は一切変えているつもりはありませんでしたからね。やはり社長という立場を意識されてしまうのかと。これではマズイ。すきを作っておかなければいけないと思いました」
 「もともとポッカは、上司に対しても役職でなく○○さんと呼ぶ会社です。思ったことを自由に発言できる家族的な雰囲気はこれからも残していきたかったのです」


――ポッカは2005年にMBO(マネジメント・バイ・アウト)をし、現在は3年後の再上場を目指しています。手ごたえを聞かせてください。

 「上場するだけなら、現在でもかなり高い確率にあります。どうせなら、以前より高い評価を得たいではないですか。『ポッカは変わった。面白い会社になった』と思われたいですし、当社の大株主であるファンド自体も企業価値をさらに上げたいはずです。そうなったと確信できるようになりたいのです」
 「もちろん、5年も6年もかけるつもりはありません。3年でやりたい。緊張感はなかなか続くものではないので、私のほうから期限を短く切りました。途中で放り出す経営者をコンサルタント時代に、何人も見てきました。当社には能力に優れた社員が数多くいます。ここはグッと集中していきたいと思っています」


――これからビジネスリーダーを目指すという方々にメッセージをお願いします。

 「もともと勉強が好きな訳ではありませんでした。ただし、勉強しなければいけないという思いだけは人一倍強かったといえます。勉強しないと達成できないような目標を掲げ、あえて挑んでいったのです。常に自分を追い詰めていくようにしてきました。キャリア形成でも同様です。自分の中長期のプランを思い描き、何年後にはこうありたいという姿をイメージする。さらに、そのレベルに到達するには、どのようなギャップを埋める必要があるかを考え、行動に移してきたつもりです」
 「人間は弱いもので、気持ちがすぐに揺らいでしまいます。あるべき姿を描いたら、その目標をきちっと持ち続けるためには、自分を無理やり追い込むくらいの強い意思が必要なのではないでしょうか」


(取材・文 袖山 俊夫)
日経BizCEOは、日経Bizキャリアと世界最大の公式MBA組織日本支部を兼務するグローバルタスクフォース(GTF)の共同サイトです。

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