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LEADERS INTERVIEW
トップと現場をつなぐ 『キーワード』を原動力に グローバルレベルで戦う
日産自動車株式会社 取締役副社長
高橋忠生氏
<<リーダー・プロフィル>> ▲1945年生まれ。68年東京大学工学部卒。同年、日産自動車に入社。横浜工場工務部次長、本社第一技術部長、生産管理部長を経て、98年取締役、99年常務、2002年副社長に就任。現在、生産、SCM(サプライチェーンマネジメント)、グローバル情報システムなどの領域を執行する。モットーは、「長い準備と突然の飛躍」。
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<<企業プロフィル>> ▲1999年の仏ルノーとの提携以来、より楽しいドライビング、より豊かなカーライフの創造・提供を目指し、グローバルレベルでの生産体制を構築。2006年6月には、生産累計台数が1億台を突破。カルロス・ゴーン社長の強力なリーダーシップのもと、さらなる成長に向けアクション・プランを展開中。http://www.nissan.co.jp
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――日産リバイバルプランの真っ只中で副社長に就任されました。以前の日産における問題を『蛸壺(たこつぼ)』という言葉で表現されていますね。
「かつての日産には、自分の部門以外には何も報告しない。上司の許可がなければ他部門との交渉もできないという意思疎通の障壁がありました。うまくいくまではオレに任せろということです。責任感が強い技術者がリーダーになると、とかくこうなりがちですが。それぞれが『蛸壺』に入ってしまい、全社員共有のビジョンが欠如しているなど数字に表れない問題があったのです」 「これでは、新しい発展を遂げるために部門を超えて知恵を集め合うことなどが、どうしてもできにくくなります。おのずと事業のスピードはダウンせざるを得ませんでした」
――部門横断的な課題発掘チーム、解決の実行チームを設置したのも『蛸壺』からの脱却だったわけですね。そうしたマネジメント変革を推進したカルロス・ゴーン社長は、どのようなリーダーとして映りましたか。
「トップはビジョンを提示しなければいけませんが、通常はぼやっとしたものになりがちです。しかし、彼は違っていました。メッセージが具体的かつシンプル、非常に明快なのです。『自分はこうありたい』というのが前面に出てきます。『できるか』ではなく、『こうしたい』という気持ちが強い。こうした姿勢は、自分にとっても大いに学ぶべきものがありましたね」
――トップのビジョンを具現化するために、副社長として何に注力されたのですか。
「私自身は現場から『キーワード』を拾いあげ、改革へのブリッジとするよう努めてきました。例えば、『いるだけ生産』や『ストライクゾーン』。いずれも『同期生産方式』という顧客注文順に作成された生産計画に従い、短時間で優れたものをきめ細かく作るためにどうすれば良いかを現場の技術者たちとやりとりをしているなかで作ったものです。現場発想だとブリッジを大勢が渡れます。おのずと共有化できる範囲も広がってきますからね」
――『キーワード』の持つ意義とは何ですか。
「ビジネスで成功するコツは、『キーワード』を作って方向性を分かりやすく示すことだと思っています。トップのビジョンとビジネスの現場にはかい離がありますね。ビジョンで実現したいことを『キーワード』に集約し、社員に分かりやすく伝えていくことが重要なのです」 「もちろん、『キーワード』がマネジメントで使えるかどうかは、私たち経営陣のセンサーの磨き方次第です。そのためにはセンサーを現場で磨かなければいけません。頭がコンピューターだとすれば、あと必要なのは五感です。細胞に埋め込んでおいた発想の種が現場での刺激に敏感に反応してシナプスが生まれてくる。だから実感とフィットしてくるのです」 ――06年9月中間期の連結決算は、「ゴーン改革」以降で初の営業減益になりました。日産の変革はまだまだ途上だと思いますが、今後の課題は。
「匠の本質を備えた現場を持てるかどうかです。具体的には『同期生産方式』を世界各国の工場にも導入し、さらなる品質・生産性の向上、顧客への納期短縮を達成していくことです。今やグローバル企業同士がし烈な競争を繰り広げています。日産も例外ではありません。生産力を高めるために発展途上国にある工場を徹底的に教育しています。もちろん、日本の工場を空けるという意味ではありません。教える存在、トップランナーであり続けるには、自らがジャンプしていかなければならないと認識しています」 「エースがいて、その存在を脅かす若手がいる。そうした環境を作り上げていきたいのです。『インターナル・ベンチマーク』を重視した切磋琢磨体制を構築し、改善による技術革新・ノウハウなどの集中蓄積を図っているのも、そのためです」
――これからビジネスリーダーを目指すという方々にメッセージをお願いします。
「2点お伝えしたいですね。第1には、透明になれる能力を持つこと。自分がやったこと、考えたこと、持っている情報をオープンにできるようになってほしい。これを言ったら、相手からばかにされるのではないかとか、隠しておこうという心の壁を越えてこそ、初めてシナジーが出てくるのです。自分の中だけでグルグル回していても何も生まれません。自分がオープンになることで初めて相手もオープンになる。ただ、その際に心を開いた相手の言葉を聴く耳をもてるかどうかがポイントです。特にリーダーの場合には、自分の方がより情報を持っている立場なので、部下に対して透明性を徹底することで目的意識や戦術戦略が共有できるようになります」 「第2に、練習ばかりではなく勝負の場に立つこと。厳しい生存競争をするからこそ、足腰が鍛えられるのです。これは、スポーツだけではありません。ビジネスも同様です。最初は負けてもいいですよ。まずは挑戦してみる。トライしてみて初めて見えてくるものがあるはずですから。今の時代、個人にしろ、企業にしろ、勝負の場は日本だけではありません。グローバルになっていることを忘れないでください」
(取材・文 袖山 俊夫)
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