日本の大学教育のイノベーションへ向けて
■世界の教育分野の転換
大学教育と医療。 伝統的な国のインフラを支える重要な2つの領域は、どの国でも競争原理が働かず、他産業と比べ、結果としてサービスレベルが停滞しがちな、代表的な「非サービス」事業と言われています。
「イノベーションのジレンマ」(原題:Innovator's Dilemma)の著者で、2期連続で世界最高の経営思想家に選ばれたハーバードビジネススクールのクレイトン・M・クリステンセン教授も、特にこの2つの分野に関して、自らの破壊的イノベーションの理論を適応し、個別の論文を発表しています。
大学教育で言えば、スタンフォードやハーバードといった主要スクールでさえ、クリステンセンの予測と提言を証明するかのように、コモディティ化する教育に対応すべく、「授業コンテンツの無料化」や「インターネット学習の推進」を進めています。
と同時に、大学として「リアルタイムでかつ現地で行う付加価値とは何か?」、それによって「学生が得られるベネフィットとは何か」?という、本来サービス業として当然のサービスレベルの追求に本腰を入れ始めています。
■日本の教育分野の現状と可能性
日本に目を向けると、文部科学省事業として、大きく2つの取り組みがされています。
(1)グローバル30 プロジェクト | 2020年を目処に30万人の留学生の受入れを目指す「留学生30万人計画」が2008年7月29日に策定、13の大学が採択され、昨年度まで活動を継続してきました(東北大学、筑波大学、東京大学、名古屋大学、京都大学、大阪大学、九州大学、慶應義塾大学、上智大学、明治大学、早稲田大学、同志社大学、立命館大学)。
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(2)スーパーグローバル 大学プロジェクト | 2014年策定のプロジェクトでは、大きく「トップ型」(世界大学ランキングトップ100を目指す力のある、世界レベルの教育研究を行う大学)と「グローバル化牽引型」(これまでの実績を基に更に先導的試行に挑戦し、我が国の社会のグローバル化を牽引する大学)に分け、トップ型が一校当たり最大5億円、グロ―バル化牽引型が一校あたり3億円の補助金をもとに、大学のグローバル化を進めるというもの。37校が採択。
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その背景として、優秀な留学生が日本でなく、中国や韓国を選んでしまうことにあります。 多くの有名私立や国立大学でも、英語のウェブサイトは個人のホームぺージのような状態だったり、言語サポートや、各種生活サポートが無い中では、学業に集中するイメージが持てないのも当然です。
グローバル化へ向けたいかなる取組みも、間違いなく言えることは「やらないよりはやった方が良い」ということです。 しかし、事業として行う以上、重要なことは、「いかに効果的に結果につながる取り組み(だけ)を優先順位をつけて行っていくか」ということです。
つまり、単なるばら撒きにせず、文科省主導のプロジェクトも最大限に活かすためにには、「競争優位」の視点とそれによる評価が必須です。
■我々の啓蒙と取組み
私達がボランティアベースで啓蒙する最初の取組みは、「大学にとってお客様である留学生を含めた学生(潜在的学生)の評価を世界レベルのベンチ―マークに沿って評価をすること」です。
社会起業家の創業者がロンドンで立ち上げ、現在は英国政府、オーストラリア政府、香港政府等、多くの政府機関と、世界約1、400の教育機関が参加する、世界統一ベンチマークに基づいたオンライン学生サーベイ「International Student Barometer (TM)」(提供:International Graduate Student Insight Ltd. "i-Graduate")です。
世界トップの大学でも「優秀な学生の熾烈な獲得競争」が続いています。 ゼロサムゲームと言える学生獲得競争で重要になるのは、「いかにライバルとなる世界の主要大学よりも先に優秀な学生を獲得できるか?」です。
そのため、GTFでは、2014年12月に、i-Graduateが提供する世界の大学の学生評価ベンチマークに基づいたオンラインサーベイへの日本の大学の参加をボランティアベースで行うことを決め、推進しています。
スーパーグローバル大学の採択大学のみならず、広く啓蒙活動を行っていく中で、ぜひ各方面からのご支援・ご協力を頂きながら、進めて行けると幸いです。
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News! 下村文部科学大臣をお迎えする勉強会(2015年3月4日水曜日19時) 「グローバル人材の育成に向けて」―大学のグローバル化と変革に必要なもの―
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