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自分たちが本当にやりたいことにこだわり続けたい

株式会社シークエッジ・パートナーズ 代表取締役社長
栃本克之氏


1986年早稲田大学政経学部政治学科を卒業後、富士銀行(現みずほ銀行)に入行。その後、ボストン・コンサルティング・グループなどを経て、モニター・グループ日本支社長として、内外のさまざまな企業に対して全社戦略立案、マーケティング戦略、組織改革、M&A、提携戦略などを支援。2003年シークエッジ・パートナーズ(SQP)を設立、代表取締役に就任。企業進化をテーマとするコンサルティングを展開する。マーケティング、企業財務に関する論稿多数。42歳。


クライアントの成長・進化・再生をサポートしたいとするシークエッジ・パートナーズ社長の栃本克之氏に、経営ビジョン、目指すリーダー像などを聞いた。

--米系戦略コンサルティング会社、モニターグループ日本支社長から転身しSQPを起業されましたが、経緯を教えてください。

  「モニターグループのトップと意気投合し、日本の支社長を務めました。グループのモデルにも共感できるものがありました。 一時はこれが、自分にとってキャリアの完成形になればいいと思い描いていたものです。ただ、実際に働くなかで納得できない部分を感じていました。 やはり、米系の会社ですから米国のクライアントをどうしても最優先するということです。自分としては、クライアントに国境はない。しかし新規開拓に当たっては日本企業を優先したい、さらには中堅企業のサポートにも本腰を入れたいという思いがあったのですが、会社の方針との間に着地点をうまく見つけることができませんでした」

--確かに、SQPでは中堅企業に対する質の高い戦略コンサルティング・サービス
の提供を目的に掲げています。


  「まず中堅といっても売り上げ数百億円程度を指していることが多いです。 このレベルだと戦略コンサルティングによる効果には劇的なものがあります。 巨大企業ですとせっかくクライアントと一緒に頑張っても実行には至らないケースもあります。 はがゆい思いを何度もしました。もちろん大企業とのお付き合いも大切ですし否定する気は一切ありませんが、これから伸びていくべき中堅企業に対しても、これまでにない戦略性と実効性の高いサービスを提供することで、企業の『再生』『進化』『成長』を強力にサポートしていきたいのです。 やはり、ワクワク感を自分のキャリアの中で大きくしていきたいじゃないですか」

--クライアントとは運命共同体だというコンセプトも斬新ですね。

  「クライアントとは永続的に携わり続けたいのです。 そのためには、客観的な外部者にとどまるという従来のコンサルティングスタイルでなく、クライアントとは運命共同体として、ともに企業革新を実現していきたいと考えています。 ただし連続的にプロジェクトに携わると、ややもすると“経営企画テンポラリースタッフ”になりがちな面がありますが、これは決して良いことではありません。 あくまでも、我々のテーマはクライアントが自律的・自立的に成長するための土台、モデル、戦略、組織を作り上げることにあります。クライアントが自らのポテンシャルを引き出しより進化するために、それぞれのフェーズで直面する新しい課題、より高度な課題をクライアントと一体となって解決するというスタンスを維持していかなければなりません。 また我々自身がクライアントと一体となって問題解決することを強く動機付けできるように、特に中堅企業とのコンサルティグにおいてはストック・オプションや成功報酬をいただいています。 そうなるとクライアントの成功、成長はもはや他人事ではありえないということです」 

--SQPの主要なドメインはどこに置いているのですか。

  「コアにあるのは戦略コンサルティングです。 その中でも成長戦略の構築、実行支援に特化しています。 会社を取り巻く環境を把握し戦略シナリオに昇華する過程をはじめとして、ビジネス・モデルの構築、進化、事業全体のポートフォリオ戦略、マーケティング、営業戦略を扱い、またこれらを根付かせるための学習組織の構築をサポートします。 言い換えるとコストダウン、オペレーション改善は基幹戦略の遂行に関連する場合以外はやらないということもできます。 コンサルティングの領域を「成長」に絞っている分、特徴的に伸ばしている部分がM&Aの分野です。通常のコンサルティング会社よりも踏み込んだ形でディール・ストラクチャリング、交渉のサポートを行います。 グループ会社で金融の専門会社であるシークエッジとも連携し、自ら投資、資金調達するための柔軟性すら確保しています。クライアントが成長、進化、再生するための最も重要なニーズを高いレベルで提供すること。これがSQPのドメインだといえるでしょう」

--事業のすべり出しはいかがですか。

  「順調そのものです。クライアントには待機してもらっているほどです。 現在3人から5人ほど増員しようとも考えていますが、間違いないクォリティーを提供したいので慎重にキャスティングしている段階です。 正直言って始める前には本当に大丈夫かなという思いもありましたが、モニターグループに在籍していたころよりも私自身が案件に入り込めるということでの信頼感や成長戦略に特化したメンバーがそろっているという強みがうまくリンクできている気がします」

  「大手外資系戦略コンサルティングファームと同等、ないしはそれ以上のクォリティーを保持しているという自信があります。 中堅企業に対するコンサルティングではキャッシュポジションを下げることがあっても、ストックオプションあるいは成功報酬も含めて手掛けることにしていますから、結果的には大企業相手の場合よりも多い利益を得ることもあります。 案件の比率では売り上げが数千億円から数兆円の大企業、外資系企業とおよそ100億円から数百億円レベルの中堅企業が半々と、いいバランスになってます。大企業は大企業ならではの悩みをすでに経験しています。 これは中堅企業にとっても予見し参考にすべきものです。一方動きの早い昨今では急成長する中堅企業の仕組みを大企業も学ぶべき点があります。そうした意味ではその両方に深く入り込んでいる我々のような存在はお役に立てるシーンが広がっていると感じます」

--栃本社長がリーダーとして心掛けていることは何ですか。

  「この会社で一緒にやっていくことが楽しい、充実していると感じられるようにビジネスを運営することです。 私としてもこれは面白い、ワクワクするという案件だけをとってきているつもりです。 私たちがワクワクするプロジェクトこそ私たちがクライアントに価値を出せるプロジェクトなのです。 その結果がWin−Winをもたらすはずですから。外食チェーンの買収サポート、食品企業の再生戦略、メガバンクの基幹戦略、メディア企業の新規事業戦略−−、これまでに大小、業種関わりなく多くのプロジェクトテーマを手掛けてきましたが、いずれも相当興奮してやれるプロジェクトばかりであったといえる自信があります」

--最後に、ビジネスリーダーを目指したいとする方にアドバイスをお願いします。

  「とても、そんな大層なレベルではありません。 部下やクライアントに対して先生面、コンサルタント面しないようにしているつもりですから。 こうしろ、ああしろというのではなく、むしろ自分はこうしたパスを描いてきたけれど君はどうするか考えてほしいといいますね。 それを前提に4点ほどアドバイスさせてください」

 (1)先入観、固定観念にしばられないで頭を柔らかくして物事を見てみよう。
 (2)あきらめず、ギリギリまで入っていこう。上っ面だけを考えても何も出てきません。
 (3)たまには退いてみよう。ここ掘れワンワンだけでなく高いところに立ってみること。
 (4)日本のメディアだけでなく、海外のメディアからも情報をとってください

(取材・文 袖山 俊夫)
日経BizCEOは、日経Bizキャリアと世界最大の公式MBA組織日本支部を兼務するグローバルタスクフォース(GTF)の共同サイトです。

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