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「『自分の魅力』を『自分の響き』で表現できるビジネスリーダーを目指してほしい」

有限会社シューツアンドトーン
代表取締役
アーティスト・発声表現研究家
楠瀬誠志郎氏

<<リーダー・プロフィル>>
1960年生まれ。音楽家の両親のもと、幼少のころより、ヴォイストレーニング・発声学を学ぶ。1986年CBSソニー(現Sony Records)より「宝島」でデビュー。その後ほぼ1年に1枚のペースでアルバムをリリース。これまでに13枚のオリジナルアルバム、21枚のシングルを発表。現在は、アーティストとしての活動のほか、ヴォーカリストとしての経験を生かし、ヴォイスケア・ヴォイストレーニングのレッスンスタジオ「ブレイヴォーパラ」を主宰。表現することの素晴らしさ、楽しさ、心地よさを伝え続けている。4月26日にプロデュース、書き下ろしした9組のアーティストによるオムニバスアルバムをリリース。アルバムの情報は、こちらまで。

<<企業プロフィル>>
シューツアンドトーンとは「若い芽」と「響き」を現わす。「ブレイヴォーパラ」の運営、法人研修事業等を展開。発声法の指導におけるリーディングカンパニーとして位置付けられている。東京・原宿にある「ブレイヴォーパラ」では、個人を対象とした体験レッスンを随時開催中(詳細はhttp://www.breavo-para.com/oneday/index.htmlまで)。
また、法人・団体向けには同社works事業部の法人研修・セミナープログラムの体験会を開催している(詳細はhttp://www.s-tone.com/works/training.htmlまで)



「本当の自分の声(響き)と出逢うことで、自分の意識を高めることができる」と説く有限会社シューツアンドトーン代表取締役、楠瀬誠志郎氏。豊富なアーティスト経験から「ビジネス社会でも『相手に響く声』が必要だ」と強調する。

――発声学に取り組まれたきっかけは何でしたか。

  「発声学は父、楠瀬一途から受け継ぎました。父は日本におけるヴォイストレーニングの草分け的存在で、私も幼少のころから、ヴォイストレーニング・発声学を学んでいたのです。とても意味のあることでしたから、私も40歳になったら啓蒙活動に本格的に取り組もうと決めていました。30代はひたすら曲を書いて、歌っての毎日でしたね」
  「発声学はエンターテイメントの世界の方だけのメソッドではありません。ビジネスの世界も含めて、社会全体に役立つはずだという予感が以前からありました。実際にボストンで発声学の最新理論とノウハウを学び、この感動を日本の人々にも伝えたいという気持ちにかられたのです」


――ビジネスリーダーにとって、発声学とはどのような意味があるのですか。

  「ビジネスにおけるコミュニケーションは難しい面が多いものです。相手に、自分の意図がなかなか伝わらないことも珍しくありません。こうした場面で相手に聞かせるためにテクニックを駆使する人が多いようですが、『聞かせる』というスタンスでなく、むしろ『感じさせる』という取り組みが大切なのではないでしょうか。答えは相手が自分の中に持っているものです。感じれば、人は自ら動いてその答えを自分で導き出すものです。『感じさせる』ための手法は世の中にたくさんありますが『相手の心に響く声』はビジネス社会でもとても有効なものだと思います」
  「優れたビジネスリーダーは感じさせて動かす力を持っている人であるはずです。その意味でも、発声学はとても大きな要素になるといえます」
  「米国には、エグゼクティブ・ボイス・トレーニングと呼ばれるレッスンがあります。午前中、午後、夜と時間帯や話をする対象・内容に合わせて、自分の声を切り替えることで相手の心への響かせ方を工夫するというものです。朝は力強さ、昼は明瞭さ、夜は安心感を与える話し方、発声法を訓練していきます。こうした声の幅を持てるかどうかがビジネスリーダーに問われているのです。正しい発声が自信と実績につながり、キャリアアップの武器となることでしょう。今後は私共の会社でも、このようなトレーニングプログラムを、日本のエグゼクティブに提供していく予定です」


――現在、楠瀬さんは原宿でヴォイスケア・ヴォイストレーニングのレッスンスタジオを運営されています。指導法の特徴を聞かせてください。
 
  「まずは、自分が持っている力で生きていきなさい、と説いています。そのためには、自分の力を知ること。自分を好きになりなさいと。人を感動させるためには、どうしても己を徹底的に見つめることが不可欠になってくるからです。声は非常にわかりやすいものです。自分の力を知る、自分を発見するには最適だといえるでしょう」
  「具体的には、発声という手法を使って一定のプログラムのなかで自分を見つけだす作業を続けていきます。目的は、その人の本当の声を見つけるためです。緊張状態でトレーニングして強じんになった人が、その人らしい声の響きで人を感動させられるのか、というとそれは違います。むしろ、力が抜けた時こそ、その人らしさ、その人らしい声の響きが出てくるものです。オフにする、シンプルにする。これが私のメソッドだといえます。緩めることで、自分自身を見つけることができると同時に、相手に響くようになるのです」
 
――自分と向き合うなかで何かが生まれてくるということですね。

   「そうですね。私自身のことで言えば、今手がけているこの会社はまだ創業段階です。曲作りでもそうですが、新しい何かを創作する過程は嵐の連続です。そこで一度すべてを巻き込んでいきます。その嵐が静まってきた時に初めて作品が誕生するのです。『声』を通じて、自分と向き合って、自分を見つめてきたからこそ、その嵐が楽しくてたまらないと思えるのだと思います。しかし、自分と向き合う、自己を見つめる力がなければ、作品や事業が誕生する前にその嵐に呑み込まれて終わってしまうでしょう。周囲の環境や困難に打ち勝てないということですね」


――ビジネスリーダーを目指す方々に何かメッセージをお願いします。
 
  「優れたビジネスリーダーこそアーティストでもあると言われます。優れたアーティストとは、どれだけ自分の内面に入れるかがポイントです。優秀であればあるほど、中に入っていきます。中に入る力が大きいほど、外に出ていくのも大きいからです」
  「何か特別なことをやる必要はありません。自分の声で生きてみること。自分の声で毎日を過ごしてみることです。これだけでとても変わります。面白いですよ。緊張を緩めて体に響かせながら声を出してみてください。しかも、自分が何をしたいのかを語ってみるのです。ぜひ、お勧めします」

(取材・文 袖山 俊夫)
日経BizCEOは、日経Bizキャリアと世界最大の公式MBA組織日本支部を兼務するグローバルタスクフォース(GTF)の共同サイトです。

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